国外財産調書制度
財産債務調書制度

はじめに

日本に居住する富裕層が保有する財産を把握するために、国外財産調書制度、財産債務調書制度があります。一定の富裕層は、国外にある財産を国外財産調書にて報告し、国内財産及び債務については財産債務調書によって報告することになります。

国外財産調書制度

【概要】

5,000万円を超える国外財産を保有する個人は、国外財産の種類、数量、金額、所在等を記載した調書を税務署に提出することが義務付けられています(内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律 第5条)。
財産の価額は12月31日現在で算定し、翌年の6月30日までに提出をすることになっています。

 【提出義務者】

提出義務がある人は、日本の居住者でその年の12月31日時点において5,000万円超の国外財産を有する者です。
但し、非永住者を除きます。非永住者とは、日本の国籍を有しておらず、且つ、過去10年以内に日本に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である個人をいいます。

【対象となる財産】

報告の対象となる財産は、国外にある財産の全てです。土地、建物、共有不動産(ジョイント・テナンシー)、預貯金、共同名義預金口座(ジョイント・アカウント)、有価証券、(ストックオプション含む)、貸付金、未収金、美術品、その他 国外財産調書を提出する方が財産債務調書を提出する場合、財産債務調書には国外財産の合計金額のみを記載します。
 

【ペナルティ】

所得税、相続税、贈与税において、国外財産について申告漏れが生じたときには過少申告加算税又は無申告加算税が課されます。しかし、提出期限内に国外財産調書が提出されている場合には、その国外財産に関する過少申告加算税等が5%軽減されます。 逆に、国外財産調書の提出が提出期限内にない場合、又は提出期限内に提出していても重要な国外財産の記載がない場合、所得税や相続税の過少申告加算税が5%加重されます。
期限後に提出された国外財産調書については、所得税又は相続税について税務調査の事前通知がある前に提出されたものであれば、国外財産調書は期限内に提出されたものとみなされ、5%の軽減特例を受けることができます(令和6年1月1日以降の法令適用)。
故意に国外財産調書を提出しない場合、虚偽の記載をした場合、提出期限内に提出しない場合。1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されることがありす。
 

財産債務調書制度

【概要】

一定の要件に該当する個人は、保有する財産の種類、数量及び価額ならびに債務の金額等を記載した財産債務調書を、その年の6月30日までに税務署に提出することが義務付けられています。

【提出義務者】

次の①又は②のどちらかに該当する人が提出義務者です。
①その年の所得金額が2000万円を超え、かつ12月31日において、3億円以上の財産又は1億円以上の有価証券等を有する場合。所得金額には退職所得は含みません。
②その年の12月31日においてその価額の合計額が10億円以上の財産を有する居住者(2023年分以降)。
  • 財産には、国外に所在する財産を含みます。国外財産調書も提出する場合には、財産債務調書には国外財産の合計金額のみを記載します。
  • 非永住者も含みます。非永住者とは、日本の国籍を有しておらず、且つ、過去10年以内に日本に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である個人をいいます。
【ペナルティ】

所得税、相続税について申告漏れが生じたときには過少申告加算税又は無申告加算税が課されます。しかし、提出期限内に財産債務調書を提出している場合には、財産債務調書に記載がある財産又は債務に関して生じた申告漏れについては、その財産に関する過少申告加算税等が5%軽減されます。 逆に、財産債務調書の提出が提出期限内にない場合、又は提出期限内に提出していても重要な財産債務の記載がない場合には、その記載のない財産債務に関して生じた申告漏れについては、過少申告加算税等が5%加重されます。
期限後に提出された財産債務調書については、所得税又は相続税について税務調査の事前通知がある前に提出されたものであれば、財産債務調書は期限内に提出されたものとみなされ、5%の軽減特例を受けることができます(令和6年1月1日以降の法令適用)。

まとめ

日本に居住する富裕層は、国外財産調書および財産債務調書によって、国外及び国内両方の財産を国税当局に報告することになっています。 今後の所得税または相続税の申告を漏れなく適正に行っていれば過少申告加算税等は発生しません。しかし仮に申告漏れが発生した場合、国外財産調書、財産債務調書を適正に提出していれば、ペナルティが軽減されるというメリットがあります。逆に国外財産調書、財産債務調書を提出していなかった場合には、ペナルティが加重されるというデメリットが発生します。