外国人が日本に入国した年度の確定申告等

こんにちは、山口国際税務会計事務所の山口善夫です。

前回は、海外に出向していた従業員が日本に帰国した年度の確定申告等の要否について見てみましたが、今回は日本に赴任してきた外国人が日本に入国した年度の確定申告等の要否を確認していきます。どちらも、ポイントは帰国(入国)をした年度においては、当該従業員には帰国前(入国前)の非居住者の期間と帰国後(入国後)の居住者の期間の両方がある点です。

課税の範囲

日本に赴任してきた外国人は、1年以上の予定で日本に居住することを仮定すると、入国の日の翌日から日本の居住者という扱いになります(所得税法2条1項3号)。さらに外国人である場合には、多くの場合は「非永住者」に該当することになると思われます。

非永住者とは、日本の居住者ではありますが、日本の国籍を有しておらず、且つ、過去10年以内において国内に住所等を有していた期間の合計が5年以下である個人を言います(所得税法2条1項4号)。

日本に入国する前の当該外国人は日本の所得税法上は非居住者であり、非居住者は日本で生じた国内源泉所得に対してのみ日本で課税されます(所得税法7条1項3号)。日本に入国後は「非永住者」という位置づけになり、非永住者が課税される所得の範囲は、

(1) 国外源泉所得以外の所得(≒日本源泉の所得)

(2) 国外源泉所得で、日本にて支払いがある、又は日本に送金されたもの

です(所得税法7条1項2号)。非永住者が日本で課税される範囲の詳細はこちらの記事をご参照ください。

非永住者が日本に入国する前の非居住者の期間中に(下記図のオレンジ)、給与の支払いをその母国で受けた場合、その給与は国外源泉の所得であるため日本での課税はありません。

しかし、日本に入国した日以後の非永住者となってから(下記図の青)、第1回目に支給される給与賞与の取扱いには留意が必要です。次の賞与の例でみてみましょう。

 

 

入国後に最初に支払われる給与・賞与について

例えば、賞与の計算期間を10月1日から3月31日までとし、入国日が2月1日、賞与支給日が6月1日であったとします。10月1日から入国日の2月1日までは国外勤務をしていた期間であり、これに対応する賞与部分は国外源泉所得です。入国後の2月2日から3月31日までは日本にて勤務をしていた期間であり、これに対応する賞与部分は国内源泉所得ということになります。

「入国前の国外源泉所得部分は非居住者の期間に発生したものなので日本では課税の範囲外である」、とはならないことには注意が必要です。

 

賞与の収入金額が具体的に確定して支給を受けたのは入国後の6月1日の時点です。この時、当該従業員は非永住者です。非永住者が課税される範囲は、

(1) 国外源泉所得以外の所得(≒日本源泉の所得)

(2) 国外源泉所得で、日本にて支払いがある、又は日本に送金されたもの

です。これを本件の賞与に当てはめると、

(1) 入国後の日本での勤務期間に対応する部分(≒日本源泉の所得)

(2) 海外での勤務期間に対応する部分のうち日本で支払われる部分(国外源泉所得で日本にて支払いがあるもの)

は日本での課税対象となります。

つまり、本件では6月1日に支払いを受けた賞与の全額が課税対象であり、会社は全額を対象に源泉徴収をする必要があります。

外国税額控除により還付された所得税は誰のものか

上記の賞与のうち国外勤務期間部分に対しては、通常勤務地の国においてもその国の所得税が課せされますが、その外国所得税を日本の親会社又は現地子会社が負担をするケースがよくあると思います。この国外勤務部分については、外国と日本で二重に所得税が課税されているので、当該従業員は居住地国である日本において外国税額控除を適用して外国で課された税金を減額又は還付請求することができます。外国税額控除の適用を受けて所得税の還付を受けた場合には、これのもととなった外国所得税を会社が負担したのであれば、還付を受ける所得税は会社に帰属させることが公平であると言えます。この点は、事前に会社の給与規定等に規定をして従業員には十分に周知しておくべきでしょう。従業員が受けた外国税額控除による還付金は会社に引き渡さなくてはならないという法律上の規定があるわけではなく、その方が公平であろう、ということです。

年末調整

年末調整については、入国日以後に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出し、居住者となった日以降に支払う給与等の金額が2千万円以下である場合には、入国日以後年末までに給与等の支給期が到来するものを対象として行うこととなります(所得税法190条)。