いわゆる中小企業(年間売上高20億程度)は移転価格税制による課税リスクはどの程度あるのか、どの程度対応準備しておく必要があるのでしょうか。
この問いに対しては、答える人によって回答はまちまちであり、説得力のある回答を得たことがない、というのが私の実感です。しかし、この度、初めて説得力のある回答を得たので、ここにてご紹介いたします。但し、説得の力の根拠は未確認であり、あくまで私個人の主観です。
回答した方は、現在民間コンサル会社(中堅税理士法人系列)に在籍している見た目50代後半の男性。前職が国税の移転価格専門調査官として10年のキャリアのある方です。
回答:資本金1億円以下の中小法人であれば移転価格による課税リスクはない。
理由①
前提知識ですが、国税局は税務署を指導監督する機関ですが、資本金額1億円以上の大企業に対しては自らも税務調査を行います。税務署は、それ以外の中小企業、個人などを対象に税務調査を行います。
資本金1億円以下の中小法人に対して税務調査を行うのは税務署ですが、税務署には移転価格による課税を行う決定権限がない。
理由②
仮に、国税局の移転価格権限のある調査官が調査に関与したところで、国税局は「相互協議」には持ち込みたくないので、やはり移転価格による追徴課税は避けたい。
相互協議とは、例えば日本の移転価格調査によって課税を受けた場合、日本での課税と外国での課税の2重課税が発生するが、これを調整するために国同士が協議を行うことを言います。この相互協議案件の量に対して、これに配属されている国税担当者の人数が少なすぎるため、案件をさばける状況にはないとのことです。
なるほど、中小企業に対しは移転価格による課税はほぼあり得ない。
しかし、代わりに国外関連者に対する寄附金と認定をして課税をしてくるとのことです。
これに対しては、その元調査官いわく、税務署が寄附金課税と主張をしてきたところでその課税根拠は間違えている、あくまで企業は移転価格の問題であるという主張をするべき。移転価格の問題になれば、結局、移転価格課税はできないのだから。
なるほど、寄附金ではなく移転価格の問題であると主張をすればよいのか。
寄附金課税と移転価格課税の区別については、どちらも課税をされるのだから大した違いはないと思っていましたが左にあらず、極めて重要であることがわかりました。
しかし、寄附金と移転価格問題の区別は何か、よくわかりません。少々腰を据えて調べる必要がありそうです。今後、二つの違いをご紹介できればと思います。
ちなみに、では中小企業としては、移転価格税制に対する準備は特段必要はないのでしょうか。
これに対して元国税調査官いわく、ローカルファイルのような法令上の書類までは必要はないが、社内の移転価格方針を策定して、これに基づき海外関連者との取引価格を決定していれば、問題はない、とのことです。
なんというか、それでは、中小企業も大企業もやるべきことは同じといっているのと同じ。中小企業であれば、何も恐れず何も対応をする必要はない、と言い切ってほしかったです。
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