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一時帰国者の税務
7月 25, 2020
海外の子会社に赴任していましたが、コロナ禍の影響で日本に帰国をしている従業員の方が多くいると思います。なかなか海外に戻ることができずにいて、すでに183日が経過している、というケースが起きていたのではないでしょうか。183日を超えた場合の日本の所得税、源泉徴収、確定申告について実際の税務調査の経験を踏まえて検討してみます。
居住者性
日本での滞在が予定外に長引いているとはいえ、一時帰国の期間が1年以上となるまでは、基本的には日本の税法上は非居住者のままであると考えられます。
居住者非居住者の定義は、国によって違いがあります。日本の税法上非居住に該当するからと言って、赴任国で居住者として扱われるとは限りません。あくまで赴任国の税法上の定義によってその国の居住者か非居住者かは決まります。
(参考
非居住者が居住者になる時点
)
非居住者が課税される範囲
国内源泉所得となる給与を、海外において支給される場合には、その給与支払いをする海外の子会社には、源泉徴収義務はありません(所得税法212条1項、2項)。源泉徴収されない場合、当該非居住者は、納税管理人を定める場合にはその年の翌年の3月15日までに、納税管理人を定めない場合には帰国日までに、給与等について日本で確定申告をする義務があります(所得税法164条2項2号、172条1項)。
所得税の税率は20.42%です(同法170条、復興特別所得税を含む)。たとえ給与の金額が2000万円以下であっても確定申告が必要となります。
以上が法令上の規定に基づくものですが、私が経験した税務調査の実務においては、日本親会社が源泉徴収したことにして納税をするべきであり、一時帰国者は自ら確定申告をする必要はない、という説明を調査官より受けました。会社による源泉徴収については法令上の根拠が不明です。下記の日本親会社による立替払の場合と異なり、海外子会社が支払っている部分であり、日本親会社は立替払いをしていません。 非居住者の給与のうち、国内における勤務に係る部分の金額は、次の算式で算定することになっています(所得税法基本通達161-41)。 給与の総額×(国内勤務期間/給与計算の基礎となった期間)
但し、国内勤務の部分の給与が著しく少額である時には課税しなくてもよいことになっています(同通達同上)。
課税の方法
海外子会社支払いの給与の場合
国内源泉所得となる給与を、海外において支給される場合には、その給与支払いをする海外の子会社には、源泉徴収義務はありません(所得税法212条1項、2項)。源泉徴収されない場合、当該非居住者は、納税管理人を定める場合にはその年の翌年の3月15日までに、納税管理人を定めない場合には帰国日までに、給与等について日本で確定申告をする義務があります(所得税法164条2項2号、172条1項)。
所得税の税率は20.42%です(同法170条、復興特別所得税を含む)。たとえ給与の金額が2000万円以下であっても確定申告が必要となります。
以上が法令上の規定に基づくものですが、私が経験した税務調査の実務においては、日本親会社が源泉徴収したことにして納税をするべきであり、一時帰国者は自ら確定申告をする必要はない、という説明を調査官より受けました。会社による源泉徴収については法令上の根拠が不明です。下記の日本親会社による立替払の場合と異なり、海外子会社が支払っている部分であり、日本親会社は立替払いをしていません。
日本親会社支払いの給与の場合
海外出向中の従業員の日本の社会保険を継続させるために、日本親会社が給与の一部を国内で支給しているケースが多いと思います。いったん国内で給与支給をしたのちに、出向先の海外子会社に当該金額を請求するケースも多いと思います。
このような場合には、平成3年5月16日国税不服審判所採決事例に基づくと、日本親会社が給与の支払い者として源泉徴収をするべきであり一時帰国者は自ら確定申告しなくてもよい、という取扱いになると考えられます。(平成3年5月16日国税不服審判所採決「外国人出向者の日本における税金を立替払いした場合に源泉徴収義務を負うとした事例」)。
日本親会社による支払はあくまで立替払いに過ぎず、日本親会社が最終の給与負担者ではありませんが、日本親会社には出向者に支払う立替金について源泉徴収義務が生じる、とのことです。
短期滞在者免税
一時金国者の給与について日本親会社による源泉徴収が必要である、という税務署の見解を前提にすると、短期滞在者免税の適用はどうなるのでしょうか。
短期滞在者免税の要件は、次の三つです。
① 日本滞在が183日以内であること
② 非居住者に支払われる給与が、日本居住者でない雇用者から支払われること(海外の法人による支払いであること)
③ 非居住者に支払われる給与が、海外法人の日本に有する恒久的施設によって負担されるものではないこと
海外子会社による給与支払いの場合には日本親会社による源泉徴収による納税が可能、日本親会社による給与立替払いの場合には日本親会社による源泉徴収が必要、というのが税務署及び国税不服審判所の見解です。
日本親会社が給与の支払いをしたという事実認定であれば②又は③の要件をみたさず、短期滞在者免税は適用されないことになると思われます。
他方で、OECDモデル租税条約15条の逐条解説では、上記短期滞在者免税のうち②③の趣旨は、給与所得が源泉地国内で控除可能な費用として認められていない限りにおいて短期勤務の源泉地課税を回避すること、と説明されています。出向者の給与を立替払いしている日本親会社ではその金額を費用に計上していないため、短期滞在者免税の要件を充足していると言うこともできると思われます。
仮に短期滞在者免税が適用されない場合、一時帰国者は日本での勤務によって生じた所得について所得税が課されます。短い休暇を利用した帰国や、入院のための帰国、冠婚葬祭に参加するための帰国もあり、必ずしも国内で仕事をするわけではありません。そのような短期間の滞在の場合であっても、短期滞在者免税は適用されないという結論は妥当ではないでしょう。
二重課税の問題
海外勤務者が赴任している国(海外子会社の国)が全世界所得課税方式を採用していれば、日本での勤務期間に対応する給与所得に対しては、その国でも課税の対象となるでしょう。
日本と赴任国での二重課税となります。このように日本と外国で二重課税が生じている場合には、居住者となっている国において税額控除の手続きをして、税金還付の手続きをとることができるかどうかを検討すべきです。
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