非永住者 株式譲渡所得に対する課税

山口国際税務会計事務所の山口です。 日本で生活をしている外国人の方々が株式を譲渡して所得を得た場合には日本で課税されるのでしょうか? 外国人と言っても、日本税法上の位置づけは非居住者であったり、非永住者であったり、永住者であったりするでしょう。今回は、数が最も多いであろう、非永住者の場合について確認します。 非永住者とは、日本に住所を有しているか又は1年以上居所を有する日本の居住者ではありますが、日本の国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内において国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である個人のことです(所得税法2条1項4号)。 非永住者が日本で課税される所得の範囲とは、下記です。(所得税法7条1項2号)。 ①国外源泉所得以外の所得 ②国外源泉所得で国内において支払われ、又は国外から送金されたもの つまり、非永住者については、株式譲渡による所得が国外源泉所得に該当すれば、国内支払いや送金がない限り、日本で課税されることありませんが、国外源泉所得に該当しない場合には日本で課税されることになります。 国外源泉所得となる株式譲渡による所得については所得税法において限定列挙されています。 列挙されている国外源泉所得に該当する株式譲渡とは、次のいずれかの場合です。 ① 外国金融商品市場での株式譲渡等のうち一定のもの(所得税法7条1項2号、同施行令17条1項) ② 外国法人が発行する株式等で、その発行済み株式等の一定割合以上を所有する場合に、その外国法人の本店等の所在する国においてその譲渡による所得に対して外国所得税が課されるもの(所得税法施行令225条の4第1項4号)。 (*) 私の理解では、”一定割合以上”が具体的に何割以上なのかについての規定はないと解してます。外国法人A社の所在するA国から見ればこの日本にいる非永住者A氏はA国の非居住者でしょう。非居住者によるA社株式譲渡所得がA国で課税されるか否か、また何割以上の譲渡であれば課税されるのかどうかはA国の税法によって規定されるものであるため、あえて日本の所得税法には具体的に何割以上という規定はしていないものと思われます。 ③ 国外不動産関連法人の株式(同5号) ④ 国外にあるゴルフ場の所有又は経営に係る法人の株式で一定のもの(同6号) ④ 国外にあるゴルフ場その他の施設の利用に関する権利(同7号) 本記事では最もわかりにくい①の外国金融商品市場での株式譲渡等で一定のもの、について詳細に見てみます。 1) まず、ここでの株式には日本の会社が発行した株式も外国の会社が発行した株式も含まれています(所得税法施行令17条1項カッコ書き)。 2) 次に、外国金融商品市場での株式の譲渡等の「等」ですが、次になります。 イ:外国金融商品市場において譲渡がされるもの ロ:外国金融商品取引業者への売委託により譲渡が行われるもの ハ:外国金融商品取引業者等の国外にある営業所等に開設された口座に保管委託がされているもの等 「外国金融商品取引業者」とは、外国の証券会社等(外国法人)の他、日本の証券会社(内国法人)の外国支店も含まれます。これらの証券会社に国外での業務として売委託をしたものが、ここでいう外国金融商品取引業者への売委託による譲渡に該当します。よって、外国の証券会社等の日本支店や日本の証券会社等の国内営業所への売委託によりなされた譲渡は、外国金融商品取引業者への売委託による譲渡には該当せず、国外源泉所得以外の所得となり、日本での課税の対象となる点には留意が必要です。(財務省平成29年度税制改正の解説)。 3) 外国金融商品市場での株式譲渡等のうち、いつ取得をしたのか、どの居住者性のステイタスの時に取得したのかによって、国外源泉所得かどうかが違ってきます。
非永住者の期間の取得 非永住者以外の期間の取得
10年以内の取得 (d)2017年4月1日以後取得 →非国外源泉所得(課税される)     (a)国外源泉所得(課税されない)  
(c)2017年3月31日以前取得 →国外源泉所得(課税されない)
10年超前の取得 (b)国外源泉所得(課税されない)
国外源泉所得となっていても、国内支払い又は国外からの送金があれば課税対象になります。 この表は、国外源泉所得となる外国金融商品市場での譲渡等のうち一定のものについて規定した所得税法施行令17条1項、同附則(平成29年3月31日)3条、所得税法基本通達7-1を図式化したものです。 上記表の見方です。 (a)非永住者ではない期間にその株式を取得した場合:日本に来る前に(非永住者になる前に、非居住者であった時に)取得した株式の譲渡の場合です。何年前に取得したかどうかにかかわらず、譲渡による所得は国外源泉所得であり課税対象外とされます。 (b)非永住者の期間中に株式を取得、且つ譲渡の時から10年超前の取得である場合:日本に来て非永住者になってから取得した株式であっても、10年超前に取得したものの譲渡による所得であれば国外源泉所得であり課税対象外とされます。 (a)(b)取得の日が10年超前の場合には、その時のステイタスが非永住者であろうと非居住者であろうと関係なく、国外源泉所得になります。 (c)非永住者の期間中に株式を取得、且つ譲渡から10年以内の取得、且つ2017年3月31日以前の取得の場合:国外源泉所得になります。 以上を短くまとめると、 非永住者が外国金融商品市場で株式譲渡等をしたときは、非永住者である期間に取得したものであり、取得日が2017年4月1日以降かつ譲渡の日から10年以内である場合には、国外源泉所得以外の所得になり、日本で課税されることになります。 以上、非常に分かりずらい規定ぶりになっています。 上場か非上場かは問わず外国法人が発行する株式の場合には、その譲渡所得に対して外国で課税されない場合には日本で課税される。また外国市場に上場している株式の場合には、2017年4月1日以後の期間で且つ非永住者期間に取得したものである場合には日本で課税される、ということになると言えるでしょう。