会社を設立するに際しては様々なことを決定する必要があります。ここではそのうち下記事項について、どのような観点から検討し決定する必要があるかについて解説していきま
す。
会社の名称
会社の種類(株式会社か合同会社か)
決算日
資本金の額
会社機関
本店の住所
株式譲渡制限の有無
会社印鑑
役員報酬の金額、支給時期
決算公告の方法
会社の名称は、基本的に自由に決定できます。しかし、同じ本店の所在地で、同じ会社名の会社を登記することはできず、登記申請は受け付けられません(商業登記法第27条)。
会社名は、前後どちらかに必ず「株式会社」「合同会社」を付けなくてはなりません。
メール、自社サイトなどで使用する、会社名の英語表記も決定しておくとよいでしょう。
ネットで英訳を調べると、合同会社は「LLC (= Limited Liability Comapany)」、株式会社は「Co., Ltd.(= Company Limited)」という説明が多いようです。
しかし、LLCもCo.,Ltdもどちらも直訳をすると有限責任の会社という意味であり、違いがありません。
アメリカにはLLCと呼ばれる会社の法形式があり、法人の所得ではなく出資者の所得に課税をするパススルー課税が採用されています。これに対して日本の合同会社は法人の所得に対して法人税が課税される点が大きく異なり、LLCという英訳には違和感を感じます。
個人的には、Kabushiki kaisha, KK, Godo kaisha, GKというローマ字書きであれば、語弊がなく良いと思います。
日本の会社法上、4つの種類の会社が規定されていますが、実務上選択されるのは株式会社か合同会社のどちらかです。株式会社と合同会社の違い、メリットデメリットについては別記事にて解説しているのでそちらを参照してください。
参考記事:株式会社と合同会社の選択
一般論ですが、事業を拡大して多数の利害関係者(出資者、債権者等)が生じる可能性がある場合には、ガバナンスが重視される株式会社が適しており、出資者と経営者が将来的にも同一であり、できる限り情報をディスクローズしたくない場合には合同会社が適していると思われます。
決算期とは、事業年度最終日のことです。
海外では、法令によって決算期が一律12月31日と規制されている国がありますが、日本では会社は決算期を自由に決定することができます(*)。
一度決定した決算期を後で変更することは可能です。
決算日の決め方はこちらの記事をご参照ください。
(*)個人の所得税については課税期間は1月1日から12月31日と決められています。
参考記事:決算日の決め方
会社設立に際しては資本金に相当する金額を出資をする必要があります。資本金の金額は会社登記簿に記載されるため、誰でも知ることができます。
資本金の金額をいくらにすべきかは基本的に自由に決定することができますが、資本金の金額の多寡によって法令上の扱いが異なる場合があります。税金、配当規制、経営管理ビザ、許認可の観点からこちらで解説をしております。
参考記事:資本金の額をどのようして決定すべきか
機関構成は株式会社の場合と合同会社の場合で異なります。
合同会社の場合には、出資者=経営者であり、利害関係者が少ないため機関構成はシンプルです。
他方で、株式会社の場合には、多数の利害関係者が予定されており、ガバナンスが重要であることから、株主総会、取締役会、代表取締役、監査役、監査役会、会計監査人、各委員会などの機関が存在します。大会社か中小会社か、公開会社か非公開会社(*)かに応じてある程度、機関の設計が決まっていきます、
(*) 非公開会社とは、株式譲渡の際には取締役会の承認を要するという制限を設けている会社です。
会社の本店住所は会社登記をするうえで必須です。法令上は特に制限はありませんが、行政や銀行、取引先等との関係では住所をどこにするかは重要です。
バーチャルオフィス
バーチャルオフィスとは、実際に入居することなく、住所や電話番号などの事業運営に必要なオフィス機能の一部を利用できるサービスです。バーチャルオフィスを会社本店住所として登記することは可能です。
行政からの助成金、許認可、経営管理ビザの取得等に際して、バーチャルオフィスは不可となっている場合があります。
自宅
自宅を本店所在地として登記することは可能です。
但し、自宅が賃借物件の場合、賃貸借契約書に「居住用のみ」「事務所不可」といった文言がある場合には注意が必要です。行政からの助成金や許認可の取得、団体加盟等に際して事務所の存在が要件とされる場合、自宅では事務所の実態がないと判断される場合があります。
株式会社の場合、当事者は自由に株式譲渡できることが原則です。しかし、取締役会の承認がない場合には、会社に対しては株主の変更を主張できないように制限を設けることが可能です。制限がある場合にはその旨を定款及び登記簿に記載する必要があります。
小規模な株式会社で所有者(株主)の分散を防止して、会社経営の安定を図ることを可能とすることがその趣旨です。
日本では多くの小規模企業がこの譲渡制限を設けていると思われます。
近年では印鑑の廃止が様々な領域で進んでいます。しかし、2024年現在において、会社が実印を持たず、全て電子的な方法で署名をするというのには、まだ不安があり、会社実印を持つ方が無難であると思われます。
会社設立の登記に際しては、会社の印鑑を法務局に届け出ます。この時、会社代表者個人の印鑑登録済みの印鑑が必要になります。会社代表者が外国人の場合には、本国にて認証を受けたサイン証明書を個人印鑑の代わりに提出します。
2021年2月以降は、設立登記申請をオンラインで行う場合には、印鑑の届出に代えて、法務局発行の電子証明書の利用が可能となりました。
法人税法上は、①役員給与金額が毎月同額(定期同額給与)でない場合、②事前に賞与金額を税務署に届出ない場合には、損金算入することができません。
会社を設立した最初の事業年度については、定期同額給与については会社の設立日から3ヶ月以内に役員給与の金額を決定して株主総会議事録等の記録を残す必要があります。
また、会社設立をした期の賞与については、その設立後2か月以内にその金額及び支給時期を税務署へ届け出る必要があります。
参考記事:役員報酬 税務上のルール
株式会社の場合、大会社であれば貸借対照表及び損益計算書を、大会社以外の会社は貸借対照表又はその要旨を公告(誰でも閲覧できる状況にすること)しなければなりません(会社法440条1項、2項)。会社設立に際しては、公告の方法を決定して定款に記載する必要があります。公告方法には官報、新聞、又は自社のインターネットサイトがあります。
合同会社の場合には、公告は必要ありません。
公告を怠った場合には、100万円以下の過料に処されます(会社法976条)。
しかし、実際には大半の株式会社が公告を怠っており、罰則が科されていないのが実情であると思われます。
参考記事:
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