日本の居住者がアメリカに会社を設立した場合の課税関係
(本店所在地基準について)

日本の居住者A氏が、アメリカのデルウェア州に会社を設立しました。主な事業はブロックチェーンのプログラミングだそうです。アメリカの会社ではありますが、彼は専ら日本にある自宅で仕事をすることになります。

 

日本の法人税法上、彼の会社には日本での納税義務があるのでしょうか。法人税法4条1項にて、内国法人は法人税を納める義務がある、とありますが、彼の会社は「内国法人」に該当するのでしょうか。アメリカの法律によって設立された会社ではありますが、実態は日本でのみ業務を行っている会社です。このような場合には、そもそも日本の会社(内国法人)として扱われるのではないか、という疑問もあると思います。

 

この点、彼の会社は日本の法人税法上はあくまで外国法人であり、内国法人となることはない、と考えられます。

 

何をもって内国法人とするのかは国によって違うようですが、考え方としては次の3つの考え方があります。

     自国の法律に基づいて設立された場合に内国法人とする(設立準拠地基準)

     自国に本店を有している場合に内国法人とする(本店所在地基準)

     自国の国内で実質的な経営がなされている場合に内国法人とする(実質経営地基準)

 

この点、日本の法人税法は、②の本店所在地基準を採用していると言われています。その根拠は、法人税法23号(内国法人とは、国内に本店又は主たる事務所を有する法人である)にあると言われています。会社であれば本店という言いかたをし、それ以外の法人(社団法人や財団法人、学校法人など)の場合には、主たる事務所という言いかたをしているとのことです。

 

他方で、アメリカは①の設立準拠地基準を採用しているそうです。A氏の会社はアメリカデルウェア州の法律に準拠して設立されていることから、アメリカの内国法人であり、アメリカの税金を納める義務があります。

 

A氏の会社は、日本の法人税法上の内国法人ではありませんが、外国法人としての納税義務があります。外国法人については、日本に恒久的施設を有し、その恒久的施設を通じて事業を行う場合には、法人税法の納税義務者となります(法人税法1411号、13811号)。

彼が日本で業務を行う場所は、アメリカの会社の恒久的施設に該当すると考えられます。よって、彼のアメリカの会社は日本で法人税の確定申告をする必要があります。

日本とアメリカとで2重に課税を受けることになりますが、アメリカの法人税において外国税額控除を受けることによって、実際の納税は日本のみということになるでしょう。