従業員給与は、通常は給与の金額がそのまま税務上の損金になるため特に問題にはなりません。しかし、役員給与の場合には、その金額を意図的に増減させることによって企業所得を調整することが可能であることから、一定の要件を満たさないと損金にはならないように税法上規定されています。
役員給与が税務上の損金として認められるためには、次のいずれかに該当するものでなければなりません。
ここでは実務上問題になりやすい、定期同額給与と事前確定届出について解説します。
定期同額給与とは、毎月の支給額が同額であるものを言います。同額でない場合、増額又は減額された額が損金として認められないことになります。
具体的には、下記オレンジ色の部分の損金算入が認められません。
例:12月決算。期の途中で増額した場合
例:12月決算。期の途中で減額した場合
但し、次のいずれかの事由によって報酬金額を改定する場合には、損金算入が認められます。
事業年度開始日から3か月以内に開催される株主総会等の決議によって改訂される場合には、定期同額給与として認められ、全額が損金になります。
例:12月決算。3月25日開催の定時株主総会で役員給与増額を決定し、4月末支払い給与から増額する場合。
なお、会社を設立した最初の事業年度については、会社の設立日から3ヶ月以内に役員給与の金額を決める必要があります。そして、その決めた金額は、少なくとも設立1期目の間は変更することはできません。
役員の地位の変更や業務内容の重大な変更があった場合に行った役員給与の改定は、事業年度開始日から3ヵ月以内の「通常改定」でなくても定期同額給与として認められます。
この臨時改定事由による改定は、予測しがたい偶発的な事情等による定期給与の額の改定であり、利益調整等の恣意性があるとはいえないものです。例えば、役員が病気で入院したことにより、当初予定されていた職務の一部又は全部の執行ができないこととなった場合、社長が退任したことにともない副社長が新社長に就任するような場合をいいます。
経営状況の著しい悪化などの事由で、第三者である利害関係者との関係上、役員給与を減額せざるをえない場合に行った役員給与の減額改定については定期同額給与として認められます。
あくまで業績悪化などが原因ですので減額改定は認められますが、増額改定は認められません。
例えば、
などが該当します。
上記の定期同額給与は、月々の役員給与に関する規定ですが、毎月の給与以外に支給される賞与がある場合には、事前確定の届出をしない限り、損金に算入されません。
事前確定届出給与とは、所定の時期に確定した額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与で、事前に税務署にその届出をしている場合の給与のことを言います。
税務署に届出た支給額と実際の支給額が異なる場合には、増額部分又は減額部分だけではなく、実際の支給額の全額が損金不算入となります。
事前確定届出給与について、その支給額の一部につき未払計上がされた場合に、その未払部分が損金算入されるか問題になる場合があります。
これについては、給与としての実態が伴っているかどうかその実質により判断することとなるとともに、税務署へ届け出た金額が確定額であったのかどうか、そもそも「その役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する定め」が存していたのかどうかなどについて、個々に判断していくことになります(国税庁 その他法令解釈に関する情報>法人税>9役員給与等)。
事前確定届出給与に関する定めをした場合は、原則として、次の(1)または(2)のうちいずれか早い日までに所定の届出書を提出する必要があります。
(1)株主総会等の決議によりその定めをした場合におけるその決議をした日から1か月を経過する日
(2)その会計期間開始の日から4か月を経過する日
但し、新設法人の場合には、その設立の日以降2か月経過日が期限になります。
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