外資系企業のための会計事務所の選び方

会計事務所をお探しの外資系企業様、お読みください。

筆者は会計税務の業界にて15年以上の経験を有し、特に直近の5年間は外資系企業向けの会計税務サービスに従事してきたため、その基準についてはいろいろと思うところがあります。

ここではポイントを絞って、外資系企業が置かれている特有の事情を考慮する場合、特に重要となるポイントをご紹介します。

税務と英語は水と油です

日本の転職市場でバイリンガルの会計専門家をみつけることはできます。公認会計士や大企業の経理担当者などです。しかし、 バイリンガルの税務専門家となると、とたんに難しくなります。

バイリンガルというだけであれば大勢います。しかし、バイリンガルの人が同時に税務の専門家であるケースはとても少ないでしょう。

英語スキルがある税務専門家が少ないことの背景には構造的な要因があると思います。

筆者は最初、公認会計士として監査法人に入社しました。そこではIFRS(国際会計基準)の影響があってか、英語ができなければ出世はできないという雰囲気があり、皆が英語勉強に熱心でした。

その後、税理士法人に転職をして税務に携わるようになりましたが英語状況は異なりました。

税務の世界にIFRSはなく、各国の税制はそれぞれに個性的です

そのためか、英語ができて税務もできるプロフェッショナルというのは極めて少ない状況になっているのだと思われます。

会計事務所のバイリンガルが御社の担当者になるだけでは不十分です。バイリンガルで且つ税務のプロかどうかを事前に確認すべきでしょう。

労務と英語はもっと水と油です

外資系企業には、外国籍の役員や従業員が駐在することがあります。そのような場合、労務担当者は通常の給与計算や社会保険手続きに加えて、外国人特有の手続き(グロスアップ計算、外国人の所得計算及び社会保険手続き)にも対応できなくてはなりません。しかも英語で。

労務の制度というのは、国の歴史と慣習を引きずって出来上がっているため、会計よりも税務よりもよりドメスティックであり各国それぞれに個性的です。

外国人特有の労務手続きを熟知し、しかも英語でそれを説明できるという人は、本当に少ないと思います。

会計記帳担当者は税務がわかるとは限りません

会計税務業界には、会計記帳は簿記の基礎さえ知っていれば誰でもできると考えている人がたくさんいます。そしてそういう人達はほとんど税務知識がないようなスタッフやマネジャーを安い給与で採用すればいいと考える傾向があるようです。

しかし、会計記帳業務において重要なのは会計ではなく税務です。なぜなら日常的な記帳作業において、消費税、源泉徴収、交際費といった税務論点に対応しなくてはならないからです。

次の話は、筆者の前職での実話です。

ある外資系企業のクライアントが中堅の会計事務所(従業員75人、1989年設立)から私がいた会計事務所に乗り換えてきました。

外資系クライアントを専門とした評判のよい会計事務所だと思います。乗り換えてきた理由は、クライアントの親会社が全世界レベルで会計事務所をデロイトに統一するという方針を決定したためであり、その中堅会計事務所のサービスに不満があったからではないようです。

しかし、ある取引についてこれまでずっと間違えた会計処理、税務処理をしていたことに気が付きました。それはいかにも外資系企業によくあるもので、海外の非居住者からの役務提供に対して源泉徴収をするかしないか、租税条約の届書を出すのか出さないのか、という税務論点に関わるものでした。

確かに、国際税務に関するものであり、一般的には簡単な論点ではありませんが、国際会計事務所を標榜するのであれば、そこは間違えてはいけない論点であると言えます。

筆者のいた事務所でも、正解をクライアントには簡単には教えず、社内検討にかかった時間だの英語によるレポート作成にかかった時間だのという理由で70万円ほどを請求してから正解をご提供しました。確か時間単価4万円くらいだと思います。

ERP対応できるかチェックしましょう。

外資系企業の場合、親会社の方針によりERP(オラクル、SAP)を会計ソフトとして使用することがよくあります。
しかし、日本製の会計ソフト(弥生、勘定奉行など)に慣れた人にとっては、オラクル等のERPはユーザーフレンディリーからはほど遠く、非効率に感じるものです。

これも筆者の前職での話ですが、ERPには2つの苦労話があります。

1回目はクライアントのERP導入支援を行っていた時です。ERP導入が予定よりも2年遅れ、クライアントはその間のERP導入コストだけで年間2千万円の追加費用がかかってしまいました。

2回目はあるチームがERPの使用に大変な苦労をした話です。(普通ではない事態ですが)労働時間の増大が嫌で2年の間にスタッフが3人も去り、クライアント損益で大きな赤字を出し続けました。2年後にはクライアントに対して値上げ交渉かさもなければ契約解消をせざるを得なくなりました。しかし、その後ようやくチームに大々的なサポートが入ったことによって、そのチームはではERPを効率的に運用する”ノウハウ”を開発し、部署全体でERP対応を共有することができました。

効率的にやらないとすぐ赤字になってしまう記帳代行ですが、ERPはまさに会計事務所泣かせと言えるでしょう。ERPによる記帳代行を受託するのであれば、会計事務所はERP経験をもってその特性を理解し、効率的に使いこなすノウハウを確立する必要があります。さもないと、クライアントと会計事務所両社が苦しむlose-loseの関係に陥ってしまうかもしれません。

GAAPコンヴァージョンスキルがあるかどうかをチェックしましょう。

外資系企業の場合、親会社が適用している会計基準に合わせて、期中の取引は米国基準かIFRSに準拠して記帳を行うことがあります。この場合、日本の会社法及び法人税法に準拠するために、期末決算では財務諸表を日本GAAPベースに組替える作業が必要となります。これには下記のようなスキルが必要となり、公認会計士向きの業務と言えます。

  • 日本基準と米国基準/IFRSとの間のGAAP差異を理解している。(会計知識、横軸の理解)
  • 過年度のGAAP調整データと当年度のGAAP調整データが、エクセル上適切に管理されている。(簿記知識、縦軸の理解)
  • 外国にいるコントローラーの方と英語にてやり取りをして情報を入手する。

会社の規模と財務諸表の複雑性によって難易度は変わってきます。

筆者は、これまでに多くのGAAPコンヴァージョンを経験してきましたが、その実績をご評価いただき、筆者の現在の会計事務所ではGAAPコンヴァージョンだけをご依頼いただいているクライアント様もいます。

(*) GAAP: Generally Accepted Accounting Principle

大きい会社と小さい専門会社、それぞれ一長一短があります

下記は、大規模会計事務所と中小会計事務所、それぞれの長所、短所のまとめです。
(一定の傾向を表したものであり、全ての会社がこれに当てはまるわけではありません)。

Strong point Weak point
大規模会計事務所 (1) 移転価格税制やM&A組織再編税制といった専門性の高い分野の専門家にアクセスできる。
(2) ITセキュリティ、情報漏洩、個人情報保護への対応ができている。
(3) 業務の品質について信頼感がある。
(4) 給与計算、社会保険業務、法務を含めたワンストップのサービス提供が可能。
(1) 税務に関する質問をすると、時間チャージで高額な報酬を請求される場合がある。(例としては、シニアスタッフで時間単価2万円、マネジャーで4万円、パートナーで10万円)。気軽に相談するわけにはいかない。
(2) 社内の承認手続きが厳しいため、通常でないリクエストに対しては、対応が遅かったり、対応ができないということがある。
(3) 人の出入りが多く、チームのメンバーがよく変わることがある。さらには引継がきちんとしていないことがある。業務品質のレベルは、担当者によって違いがある。
中小規模の会計事務所 (1) 価格水準が妥当。

(2) クライアントからの追加質問やリクエストに対して柔軟にフットワーク軽く対応できる。
(3) 小規模事務所の場合、代表者がすべてのチームに中心メンバーとして関与することによって、業務水準が一定に保つことができる。

(1) 移転価格税制、M&A組織再編税制といった専門性が高い分野には対応できないか、不安がある。
(2) IT セキュリティ、情報漏洩、個人情報保護への対応が遅れているかもしれない。

 

理想的な会計事務所とは、中小事務所の長所と大規模事務所の長所のみを取り入れてクライアントにサービス提供できる事務所であると思います。

品質はBIG4クオリティー、報酬はスモール、レスポンスはクイック

山口国際税務会計事務所はそれを目指していますし、可能であると考えています。

なぜなら、代表者は会計税務の業界にて15年の経験を有し、直近の5年間は国内有数の大手会計事務所にて外資系企業に特化した会計税務サービスを提供してきたという実績があるからです。

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